改正した自筆証書遺言の書式

はじめての自筆証書遺言

約40年ぶりに相続法の一部が見直され、自筆証書遺言を書く負担が軽減されました。
パーソナル法務事務所では、遺言者が自分自身で簡単に自筆証書遺言書を作成できるようサポートしています。
サンプルの書式・ホームページを随時更新していきますので、時々ご覧になってみてください。
ご要望等があれば、お問い合わせフォームからご連絡ください。

民法968条からの要件

まず、民法968条の条文から自筆証書遺言に記載する要件を確認します。

  • 全文

    →以下「遺言書を書く時の注意点」の項を参照

  • 日付

    →「吉日遺言」などは無効で、特定の年月日を明示が必要
    複数の遺言書が発見された場合、遺言書の先後により効力を判別するため

  • 氏名・押印

    →「遺言者の同一性及び真意の確保」と「文書の完成を担保」するため、遺言作成者の署名・押印が必要
    花押は押印と同視することはできず、押印としての要件を満たさないため

遺言書を書く時の注意点

次に、遺言書に書く際の注意点ですが、曖昧な表現を使わず具体的に書き、以下のように特定させることが大切です。

  • 遺言者

    →誰の遺言書であるか、特定させる

  • 相続人

    →誰に相続・遺贈させるか、特定させる

  • 不動産

    →登記簿謄本通りに正確に、不動産が特定できるよう記載する

  • 預貯金

    →金融機関名、支店名、預貯金の種類や口座番号まで、金融資産が特定できるように記載する

  • 遺留分

    →相続人の遺留分についてもよく配慮する

  • 遺言執行者

    →遺言による遺産分割をスムーズに進める為にできれば遺言書で遺言執行者を指定しておく

全文を書く時の注意点

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今回の相続法の改正で、パーソナル法務事務所がおススメする書式は、財産目録の一覧を種目ごとに分け、その中をさらに相続・遺贈させたい人ごとに相続財産を列記する方法です。
そして分けられた相続財産ごとにラベル(見出し)をつけて、遺言書を書くという方法です。

このラベル(見出し)も工夫して、相続人A、Bに対して、不動産と金融資産をそれぞれ相続させるといった遺言書を書く場合、例えば「不-A」「不-B」「金-A」「金-B」といった「財産目録の種別」、「相続人」若しくは「相続人のイニシャル」等で区別が分かるようなラベル名をつけて、パソコンで財産目録を記載します。

財産目録の一覧をラベルごとに分けてパソコンで作成することで、手書きの本文を簡素に書くことが可能となります。
これにより将来、相続させたい財産目録を書き換えたい場合、財産目録の一覧をパソコンで修正するだけで可能となります。
手書き部分を修正する必要はありません。

自筆証書遺言の方式の緩和

自筆証書遺言(民法968条)

  • 1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
  • 2.前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない
  • 3.自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

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改正前は、自筆証書遺言の方式で遺言書を書くと、遺言書の全文を自書する必要があり、財産目録も全文自書しなければならなく、遺言者の負担が大きいものでした。

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改正後は、財産目録についてはパソコン等で作成することが出来るようになりました。
パソコンで作成した財産目録の各頁については、署名押印をする必要がありますが、手書きで作成する必要がなくなりなり、大幅な負担の低減となりました。
財産目録以外の個所については、今まで通り手書きとなりますので、ご注意ください!

全文、日付及び氏名を自書

民法968条1項により、遺言者が、全文、日付及び氏名を自書しないといけません。
ただし、改正後民法968条2項により、繰り返しますが財産目録についてはパソコン等で作成することが出来るようになりました。

次に日付についてですが、遺言書には必ず遺言をした日付、特定の年月日を明示する必要があります。

民法1023条(前の遺言と後の遺言の抵触等)

  • 1.前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
  • 2.前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

この民法1023条の条文から複数の遺言書が発見された場合、どちらの遺言書が先か後かを判別する必要があり、それによりどちらに効力があるかを判別することになるからです。
そのため、日付を特定する必要があるため、日付が特定できない吉日遺言(昭和41年7月吉日)といった遺言は無効となるため、注意しましょう。
容易に判明できる日付の誤記で無効ではないとされた判例もありますが、原則的には誤記にも注意しましょう!

日付・氏名・自書に関する判例

  • 日付の誤記

    →自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であることおよび真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、右日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない。(最判昭52年11月21日家裁)

  • 吉日遺言

    →自筆遺言証書の日付として「昭和41年7月吉日」と記載された証書は、本条一項にいう日付の記載を欠くものとして無効である。(最判昭54年5月31日民集)

  • 氏名

    →本条にいう氏名の自書とは遺言者が何人であるかにつき疑いのない程度の表示があれば足り、必ずしも氏名を併記する必要はない。(大判大4年7月3日民録)

  • カーボン紙

    →遺言の全文、日付および氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載することも、自署の方法として許されないものではない。(最判平5年10月19日判事)

  • 添え手

    →自筆証書遺言につき他人の添え手による補助を受けた場合、遺言者が他人の支えを借りただけであり、かつ、他人の意思が介入した形跡がない場合に限り、自書の要件を充たすものとして有効である。(最判昭62年10月8日民集)

印を押さなければならない

遺言書に押印が必要な理由については、遺言無効確認請求事件(平成元年年2月16日)の最高裁の判例から確認してみたいと思います。

遺言無効確認請求事件(平成元年年2月16日)

  • 遺言無効確認請求事件

    →自筆証書遺言の方式として自書のほか押印を要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまつて遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによつて文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ、右押印について指印をもつて足りると解したとしても、遺言者が遺言の全文、日附、氏名を自書する自筆証書遺言において遺言者の真意の確保に欠けるとはいえないし、いわゆる実印による押印が要件とされていない文書については、通常、文書作成者の指印があれば印章による押印があるのと同等の意義を認めている我が国の慣行ないし法意識に照らすと、文書の完成を担保する機能においても欠けるところがないばかりでなく、必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは、かえつて遺言者の真意の実現を阻害するおそれがあるものというべきだからである。
    もつとも、指印については、通常、押印者の死亡後は対照すべき印影がないために、遺言者本人の指印であるか否かが争われても、これを印影の対照によつて確認することはできないが、もともと自筆証書遺言に使用すべき印章には何らの制限もないのであるから、印章による押印であつても、印影の対照のみによつては遺言者本人の押印であることを確認しえない場合があるのであり、印影の対照以外の方法によつて本人の押印であることを立証しうる場合は少なくないと考えられるから、対照すべき印影のないことは前記解釈の妨げとなるものではない。

この判例から押印を要する趣旨は、「遺言者の同一性及び真意の確保」と「文書の完成を担保」となります。

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これは例えば、不動産の売買契約において、捺印契約者本人が購入、売却する意思がしっかりとあることを確認するために不動産売買契約書に実印での押印を要求する趣旨と同じで、他者が勝手に遺言書を書いていないか、遺言者者本人が遺言する意思が本当に存在するのかの証明のために必要となります。

条文や判例では、実印での押印までは求められていませんが、状況によっては、本人の意思とは関係なく他人が押印したものとして、遺言の効力が争われることもあります。
その場合でも実印を押しておけば、遺言の効力が問題になったときにでも、遺言書は有効であると判断される可能性が高くなるため、紛争防止の観点からも実印での押印をおすすめします!

印に関する他の判例

  • 英文遺言の押印

    →遺言者の署名が存するが押印を欠く英文の自筆遺言証書につき、遺言者が帰化した人であることなどの事情を考え、有効とした。(最判昭49年12月24日民集)

  • 封印

    →遺言書本文を入れた封筒の封じ目にされた押印をもって、本条一項の押印の要件に欠けることころはない。(最判平6年6月24日家裁)

  • 花押

    →花押(かおう)を書くことは、印章による押印と同視することはできず、本条一項の押印の要件を満たさない。(最判平28年6月3日民集)

相続に関するルールの変更

相続法改正と遺言書保管法の制定

2018年(平成30年)7月に、約40年ぶりに相続法の一部を見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と、法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立したことで、2019年1月13日(平成31年)から段階的に相続に関するルールが変更されます。

2019年1月13日施行

2019年7月1日施行

  • 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
  • 預貯金の払戻し制度の創設
  • 遺留分制度の見直し
  • 特別の寄与の制度の創設

2020年4月1日施行

  • 配偶者居住権の創設

2020年7月10日施行

  • 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(遺言書保管法)

ここで注意すべきことは、法務局における自筆証書遺言の保管制度を利用する場合、法務省令で定める様式で書く必要があるのですが、具体的な様式については施行日(2020年7月10日)までの間に定めることとなっており、現時点(2018年12月28日)では様式は不明のため、後に保管制度を利用する場合はご注意ください。

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また遺言書の保管の申請、遺言書の閲覧請求、遺言書情報証明書(遺言書の画像情報等を用いた証明書)又は遺言書保管事実証明書(法務局における遺言書が保管されているかどうかを証明した書面)の交付の請求をするには、手数料を納める必要がありますが、その具体的な手数料の額についても施行日(2020年7月10日)までの間に定めることとなっています。

判例変更:預貯金も遺産分割の対象となる

最大決平成28年12月19日

最高裁大法廷は、平成28年12月19日預貯金と遺産分割に関する重要な決定を下しました。

判示事項

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共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は遺産分割の対象となるのか?

裁判要旨

共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる。

判断の理由

  • (1)「遺産分割においては被相続人の財産をできる限り幅広く対象とするのが望ましく、また、遺産分割手続を行なう実務上の観点からは、現金のように評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在する。…具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産であるという点において…預貯金が現金に近いものとして想起される。」
  • (2)「普通預金債権及び通常貯金債権は共同相続人全員に帰属する…ところ、…上記各債権は口座において管理されており、預貯金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り、同一性を保持しながら常にその残高が変動しうるものとして、存在し、各共同相続人に確定額の債権として分割されることはないと解される。」
  • (3)「定期貯金についても、…契約上その分割払戻しが制限されているものと解される。」

従来の判例

従来は、当事者間において預金債権について遺産分割の対象とする合意がある場合を除き、預金債権については、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、各共同相続人の分割単独債権となると判事していたため、遺産分割手続の対象とはならないこととされていました。
以下、昭和29年判決と平成16年判決を示します。

最判昭29.4.8、民集8-4-819

相続財産中の可分債権は法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する。

最判平16.4.20、集民214-13

相続財産中に可分債権があるときは、その債権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないものと解される。

関連する重要判例

(旧)郵便局定額貯金 最平22.10.8判決

定額郵便貯金債権は、相続開始と同時に当然に分割されることなく、その最終的帰属は遺産分割手続によって決定される。」これは、(旧)郵便局定額貯金については、据置期間の定めがあることや、その据置期間中には分割払戻しをしないとの条件で預入れていること等の契約の特殊性を考慮しているものとされています。

投資信託、国債、株式 最平26.2.25判決

ア.委託者指図型投資信託の受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。
イ.個人向け国債は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。
ウ.株式は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。

金銭 最平4.4.10判決

相続人は、遺産分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管する他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。

不動産の分割方法

不動産の分割方法

遺産分割協議を進めていく中で厄介なものと言えば、不動産の分割方法をどうするかという問題があります。
まずは分割方法について見ていきます。

現物分割

遺産である不動産そのものを分け、各相続人が単独で所有権を取得する方法です。
複数の不動産を各相続人がそれぞれ取得することもあれば、1つの不動産を複数に分割して各相続人が取得することもあります。

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例えば、土地Aは長男、区分所有建物Bは長女、土地Aから分筆した土地Cは次女といった具合です。

代償分割

遺産である不動産が1つの建物であったり、分割すると土地の面積が小さくなる等して土地の利用価値が劣ったり、借地借家人がいたり、複数の人が同じ不動産を単独で相続したいなどの場合、ある相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に対して代償金(現金)を支払うという代償分割という方法があります。
この場合、対象となる不動産の価格設定とその代償金の算定、そして支払い能力の有無がポイントとなります。

換価分割

遺産である不動産を取得する相続人がいない場合や、代償金の支払い能力がある相続人がいない場合には、代償分割をすることはできないため、不動産を売却して換金し分割することになり、これを換価分割といいます。

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換価分割をすることについて合意ができれば、相続人が協議の上で第三者に任意売却することで換金し、その代金を相続分に応じて分配することになります。
ただ換価分割が適当な状況であるのに、任意売却に同意しない相続人がいる場合には,家庭裁判所が審判で競売を命じることになります。

共有分割

再建築不可能な土地等で不動産の買い手が現れる見込みが非常に低いなどの理由で、換価分割でも困難な場合等では、共有分割することになります。
共有分割とは、各相続人が相続分に応じて不動産を共有する方法です。
この共有状態を解消するには、交渉・共有物分割調停・共有物分割の訴えのいずれかによって解決を図る必要があります。

遺産分割審判における不動産の分割方法

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遺産分管轄協議が纏まらない場合、遺産分割調停に進むことになり、さらに調停が成立しない場合には遺産分割審判へと移行することになります。
遺産分割審判の場においてもなお当事者間の合意ができない場合には、家庭裁判所が適切と考えられる方法を決定します。

このとき、遺産分割の調停においても審判においても、まずは現物分割によって解決することができるかを検討し、それが困難であれば次に代償分割→換価分割→共有分割といった順番で検討されることになります。

遺産である相続財産が、分割不可能な不動産だけという事例が多々あります。
ここで競売による換価分割となった場合、不動産の資産価値が大きく目減りする場合があるので注意が必要です。
遺産分割協議の中で、相互に協力しあい積極的な共有分割するというのも賢明な妥協点かと思います。

遺産分割において家事審判で競売による価額分割が行われた事例

価額分割により取得した遺留分としての分配金は譲渡所得の収入金額に該当するとした事例

裁決事例集 No.22 – 29頁

遺産分割が家事審判に基づく競売による価額分割の方法により行われ、当該分割の対象となった土地の競売代金のうちから取得した遺留分相当額の金員については、相続財産として取得したものであり、譲渡所得の課税対象とはならない旨の主張について、譲渡所得の課税は、譲渡所得の基因となる資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産の所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものであり、当該金員については、家事審判に基づく競売による価額分割がなされたことによって、その値上がり益の清算が行われたものと認められるから、所得税法第33条第3項に規定する譲渡所得に係る収入金額に該当するものであり、したがって、原処分は相当である。

昭和56年6月1日裁決

特別受益の対象

特別受益とは?

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遺産分割協議の際に、相続が争続となる火種となる要因の一つに「特別受益」があります。

特別受益とは、特定の相続人が、被相続人から婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として生前贈与や遺贈などでもらっている特別な財産(利益)の事をいいます。

特別受益を主張することは簡単ですが、実は認められるには一定の状況がないと認められないケースが多いのも事実です。

特別受益者の相続分(民法903条)

  • 1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
  • 2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
  • 3.被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

特別受益者の範囲

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特別受益者に該当するか否かは、生前贈与等がなされた時点において、贈与等を受けた者が推定相続人であったか否かによって判断します。

被代襲者に対する生前贈与等

被代襲者は、生前贈与等を得た時点では推定相続人です。
代襲者は、そのような被代襲者の地位を代襲して取得するだけであって、被代襲者以上の相続による利益を取得することはできません。
したがって、被代襲者に対する生前贈与等は、代襲相続人の特別受益として算入すべきことになります。

代襲者に対する生前贈与

代襲原因発生前に贈与等がなされても、その時点では代襲者は推定相続人ではありません。したがって、その生前贈与は、他の第三者に対する贈与と同様の性質であるため、特別受益には含めまないことになります。
一方、代襲原因発生後に贈与等がなされた場合、その贈与等を受けた代襲者は、その贈与等を受けた時点で、推定相続人となっているため、生前贈与等は特別受益に該当するとされています。

推定相続人となる前の生前贈与等

例えば、養子縁組前に養子となるべき者に与えた金銭、婚姻前に妻となるべき者に与えた金銭などが挙げられます。
原則としては、推定相続人となる前の贈与は特別受益に該当しませんが、贈与が養子縁組 (婚姻) をするために、又は養子縁組 (婚姻) することが調ったことによりなされた場合等、推定相続人となった後の贈与と実質的に同視できる場合には、特別受益に該当します。

相続人の配偶者その他の親族に対する生前贈与等

特別受益の持戻しの対象となるのは、相続人に対する贈与に限られます。
したがって、相続人の親族に対して贈与があったことにより相続人が間接的に利益を得ていたとしても、相続人の親族自身は推定相続人ではありませんから、特別受益に該当しません。
事実認定の問題として、真実は推定相続人に対する贈与であるのに名義のみその配偶者としたというような場合は、実質的には相続人に対する贈与があったとみなして特別受益に該当する場合もあります。

特別受益の対象

民法903条の1項から、特別受益の対象となるのは次の3つです。

  • 1.遺贈・死因贈与

    →遺贈は相続時に遺言で与えられるものであり、常に特別受益となります。また贈与する人が死亡した時点で、事前に指定した財産を贈与する(事前に贈与を受けた側の承諾が必要)死因贈与契約も、常に特別受益となります。

  • 2.結婚または養子縁組のための贈与

    →持参金や嫁入り道具等の持参金や支度金など。ただし金額が少額で扶養の一部と認められるような場合は特別受益とはならず、結納金・挙式費用も通常は特別受益に含みません。

  • 3.生計の資本として受けた贈与

    →独立に際しての営業資金、住居の新築資金、高校卒業後の大学や専門学校に行くための学費などは特別受益に該当すると考えられていますが、子どもや配偶者など扶養して人に使ったお金、親が子の借金返済のために支払ったお金、生命保険金、高等学校までの教育費などは特別受益に含まれないのが通例です。

相続人の中で、被相続人から「特別受益の対象となる遺贈または贈与」を受けた者は、原則として特別受益の持戻しをする必要がありますが、相続人の間で話し合いがつかなければ、家庭裁判所に調停あるいは審判の申立てをすることになります。

特別受益を主張するには

実際に特別受益があったことを証明するためには、何を用意すれば認められやすいのでしょうか?

金融機関の残高証明書や取引履歴

被相続人の(できたら特別受益を受けた人のも)銀行等の残高証明書や取引履歴から、何年何月何日にいくら動いているかなどを把握し、受け取った側のそれと照らし合わせることで、証明できる可能性が高まります。

登記簿謄本

特別受益が不動産である場合、登記簿謄本からその不動産を取得した年月日及びその原因がわかるので、家を取得した事実は確実になります。
ただし、それが被相続人からの名義書換ならいいのですが、被相続人にお金出してもらって購入した場合、そのお金が被相続人の元から出していることがわからなくてはいけません。

特別受益を主張する前提として、まずは相続人の確定と相続財産の確定をきちんと行い、可能な限り、根拠となる証拠をしっかりと揃えたうえで、特別受益を考慮した遺産分割をするように他の相続人に対して求めていくことになります。話し合いでまとまれば、特別受益を考慮して各相続人の取得額を計算し、それを遺産分割協議書に反映させることになります。

話し合いがまとまらず、特別受益の有無について争いになった場合には、最終的には裁判所で、その有無について判断されます。

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裁判所が判断する上で重要なのは、何といっても証拠の有無です。
特別受益が法的に認められるには、きちんとした財産調査や根拠となる資料収集が非常に重要となります。
不動産の場合には、登記名義を調べることによって、贈与等がされたかどうか調べることは比較的簡単です。
また、現金の場合でも、被相続人の口座から、他の相続人の口座に振り込まれていて、記録が明確に残っている場合には、特別受益と認められる可能性が高くなっていきます。

しかし、預金をいったん引き出して現金に換え、それを贈与した場合や、もともと現金で残っていたものを贈与した場合、本来は他の相続人が支払うべき費用を被相続人が立て替えて支払い、そのままになってしまった場合には、証明が難しくなり、特別受益として認められないことも考えられます。

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預金を引き出して現金化してしまった場合には、生活費等の被相続人自身のための引き出しと区別がつかず、贈与税申告書等がなければ、その現金が特別受益であるとの証明は難しそうです。
また、被相続人が立て替えて支払った費用についても、それが被相続人も使っているような費用か、他の相続人のみに関係する費用か、記録上明確になっていないと証拠としては不十分です。

お金には名前がついていないため、混ざるとわからなくなります。

そして特別受益が問題になる際には、すでに生前贈与された時期から何十年も経っていて、記憶はあるが記録はないといった場合もよく見られます。そのため、特別受益の主張は、証拠上は認められない一方で、相続人間の感情的な対立をいたずらに高め、紛争を複雑化させるだけの結論になることもありますので、注意が必要です。

新戸籍に移記される身分事項

転籍により記載される身分事項

転籍前の戸籍に載っている身分事項の中で、転籍により新戸籍に移記(記載)される身分事項は次のように施行規則で決まっています。

重要な身分事項の移記(戸籍法施行規則第39条)

新戸籍を編製され、又は他の戸籍に入る者については、次の各号に掲げる事項で従前の戸籍に記載したものは、新戸籍又は他の戸籍にこれを記載しなければならない。

  • 一 出生に関する事項
  • 二 嫡出でない子について、認知に関する事項
  • 三 養子について、現に養親子関係の継続するその養子縁組に関する事項
  • 四 夫婦について、現に婚姻関係の継続するその婚姻に関する事項及び配偶者の国籍に関する事項
  • 五 現に未成年者である者についての親権又は未成年者の後見に関する事項
  • 六 推定相続人の廃除に関する事項でその取消しのないもの
  • 七 日本の国籍の選択の宣言又は外国の国籍の喪失に関する事項
  • 八 名の変更に関する事項
  • 九 性別の取扱いの変更に関する事項
  • 2 前項の規定は、縁組又は婚姻の無効その他の事由によつて戸籍の記載を回復すべき場合にこれを準用する。

上記の認知・養子縁組の身分事項について、親側・子供側の転記され方を見てみます。

親側 子供側
養子縁組 養親の身分事項に記載された縁組事項は、戸籍が転籍その他の事由で編制替えになった場合には移記されません。 養子の身分事項に記載された縁組事項は、その後の戸籍に変動があっても養親と離縁しない限り移記されます。
認知 認知者(父親)の身分事項に記載された認知事項は、戸籍が転籍その他の事由で編制替えになった場合には移記されません。 被認知者(子)の身分事項に記載された認知事項は、転籍等の戸籍に編制替えや、婚姻、縁組等によって他の戸籍に入った場合、新戸籍または他の戸籍に移記されます。

ここで戸籍法施行規則第39条に記載れている身分事項の中で、認知・養子縁組・後見等をしたことがなく現在独身であれば、出生に関する事項だけが移記されることになります。

巷では、戸籍法施行規則を利用して、戸籍から離婚歴を消す方法というのが紹介されたりしています。
但しお子さんがいる場合は、お子さんの父・母の氏名が戸籍に記載されるため、転籍を行っても意味がありませんし、それにそもそもお子さんがいるわけですから・・・

戸籍から離婚歴を消す方法

結婚後に婚姻届を提出すると、一方が筆頭者、もう一方が配偶者になって夫婦の戸籍が新しく編成されます。
次に離婚すると配偶者は除籍され、名前の上に大きな×印が記載されます。
名前自体は消されずに、筆頭者の戸籍には誰といつ結婚したという記録が残ります。
離婚経験を俗にバツイチと言われているのも、この戸籍の×印に由来しております。

転籍の方法

除籍された配偶者が女性の場合、離婚届を出すと一旦は両親の戸籍に戻ります。
といっても戸籍が婚姻前の状態に戻るわけではありません。

婚姻して両親の戸籍から抜けたとき、子である自分の名前には×印がつけられています。
その×印の記録は消えずに、戸籍の末尾に新たに名前が追加されます。
そのため、離婚して戻ってきたことが一目でわかり、離婚歴として戸籍に残っている状態です。

次に両親の戸籍に戻った後、本籍地を現在の市区町村から他の市区町村に転籍した場合に限り、新しい本籍地の戸籍簿には離婚歴は引き継がれません(戸籍法施行規則第37条)。
つまり、自分の戸籍内にある離婚した相手についての記載や、親の戸籍内にある結婚前の自分についての記載が丸ごと消え、離婚歴がない戸籍になっているということです。

戸籍法施行規則第37条

戸籍法第百八条第二項の場合には、届書に添附した戸籍の謄本に記載した事項は、転籍地の戸籍にこれを記載しなければならない。但し、左に掲げる事項については、この限りでない。

  • 一 第三十四条第一号、第三号乃至第六号に掲げる事項
  • 二 削除
  • 三 戸籍の筆頭に記載した者以外で除籍された者に関する事項
  • 四 夫婦について、現に婚姻関係の継続するその婚姻に関する事項及び配偶者の国籍に関する事項
  • 五 その他新戸籍編製の場合に移記を要しない事項

注意点

離婚歴を戸籍謄本から消すことはできても、以下の2つから完全に消すことはできない点に注意が必要です。

  • 原戸籍(改製される前の戸籍)
  • 除籍謄本(戸籍内の全員が除籍されたり転籍して、戸籍簿から除籍簿に移された謄本)

旧本籍地に今まであった戸籍は、除籍という形で80年保存され、その除籍にはいつどこへ本籍を移したかというのが記載されていて、新本籍地の戸籍には、いつどこから転籍してきたのかが記載されています。

あくまでも現在の戸籍には記載されていないだけで、過去に遡って除籍謄本を取れば、今までのことは記載されたまま残っています。
遺産相続時には戸籍を遡って親族・血縁関係を明らかにする必要があります。
そのため自治体は、原戸籍や除籍簿を保存して過去の身分関係を確認できるようにしているのです。

取得すべき戸籍の範囲

相続人確定のための取得すべき戸籍の範囲

相続人を確定させるための戸籍の範囲は誰が相続人になるかによって異なりますが、被相続人の出生から死亡までが記載された期間の戸籍謄本は最低限必要となります。

婚姻による戸籍の編成

現行法の戸籍謄本では戸籍に記載される在籍者は「一の夫婦及びこれと氏を同じくする子」ごとになるため、子供が結婚した場合には、子供は両親の席から外れ、その子どもあるいは配偶者を筆頭者とする新たな戸籍が作られ、これを戸籍の編成といいます。

他に戸籍の編成事由として、どのようなものがあるのでしょうか?

転籍

戸籍の本籍地を移転した場合、転籍先が他の市区町村であれば転籍先で新たな戸籍が編成され、これを転籍といいます。

改製

法律や命令により従前の戸籍が新しい戸籍に編成され、これを戸籍の改製といいます。

ここで戸籍の編成によって、転記されない戸籍の情報があることを見てみます。

編成事由 新しい戸籍に移記されない情報
婚姻の場合 従前の戸籍に記載されていた父母や兄弟姉妹の情報
転籍や改正の場合 従前の婚姻・養子縁組・死亡等により除籍された人の情報

以上のことから、死亡時点だけではなく、編成事由があるたびにそれらを遡って過去の戸籍まで取り寄せない限り、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は揃わないことになります。

戸籍調査の必要性

相続人を確定させるための戸籍調査の必要性

相続が発生した場合

  • 遺言書がある場合

    必ずしも相続人全員の同意が必要ではありませんが、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議をすることも可能となります。
    また遺留分などの確認する必要があるため、相続人の確認が必要となります。

  • 遺言書がない場合

    相続人で遺産分割協議を行うことになりますが、遺産分割協議書の作成の際には、相続人全員の同意が必要となります。

戸籍を揃えてみて初めて分かること

相続人が誰か」ということは、戸籍を揃えてみて初めて分かることがあります。

  • 被相続人の先妻に子供がいた場合
  • 生前に正妻以外の子供を認知していた場合
  • 未亡人が再婚した場合、連れ子と再婚した夫が養子縁組をしていた場合

被相続人の預金

被相続人の葬祭費などの支出や相続手続きを円滑に進めるために、被相続人の預金を引き出せるようにしておきたい事があります。
この場合相続人の代表が口座を開設して、預金残高を代表口座に移管する場合も、相続人全員の同意が必要となります。

戸籍の種類と記載事項

遺産分割協議を始めるにあたって、最初に相続人調査を行います。
なぜなら遺産分割協議は、共同相続人全員の意思の合致によりなされなければなりません。
したがって戸籍上判明している相続人を除外してなされた遺産分割協議は無効となります(昭和32年6月21日、家甲第46号、最高裁判所家庭局長回答)。

また、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされていますので(民法第990条)、包括受遺者を除外してなされた遺産分割協議も無効となります。

相続人から相続分を譲受けた者を除外してなされた遺産分割協議も無効と解されています。

相続人調査の基本は、被相続人の出生から死亡までの戸籍の収集から始まります。
まずは戸籍の種類から見ていきます。

戸籍の種類

種類 概要
戸籍 現在有効な戸籍
除籍 本来の事由により閉鎖された戸籍
原戸籍 改正が必要となるような戸籍制度の大変革(形式・形状)に有効な使用中の戸籍の書換(改正)をした時の改正原戸籍

昭和の原戸籍

現民法に伴う書換(昭和33年4月1日~)

平成の原戸籍

コンピューター化に伴う書換(平成6年~)

戸籍の記載事項

  • 氏名
  • 出生の年月日
  • 戸籍に入った原因及び年月日
  • 実父母の氏名及び実父母との続柄
  • 養子であるときは、養子の氏名及び養親との続柄
  • 夫婦については、夫又は妻である旨
  • 他の戸籍から入った者については、その戸籍の表示
  • 養子であるときは、養子の氏名及び養親との続柄
  • その他法務省令で定める事項