相続分と分割方法の指定

相続分の指定と第3者への委託

相続分の指定とは、特定の財産を誰かに移転させるのかというようなものではなく、遺言により、共同相続人の全部または一部の者について、法定相続分と異なった割合で相続分を定めることが出来ます。
まずは、関連する条文を見てみます。

遺言による相続分の指定(民法902条)

  • 1.被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
  • 2.被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

遺言書による相続分の指定する書式

〇条 遺言者は、〇〇に遺産の50%、〇〇に30%、〇〇に20%を与える。

相続分の指定の効果

相続分の指定がなされると、法定相続分に優先して各共同相続人の相続分が定まります。
相続分の指定がなされただけの場合には、各遺産の最終的な帰属先はまだ未確定なため、相続財産は共有状態になります(民法898条) 。
また相続財産に金銭債務がある場合には、その負担割合についても、この指定された割合になります。

共同相続の効力(民法898条)

  • 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

そして共同相続人は指定相続分に基づいて、個々の財産を具体的に誰が相続するかについては、遺産分割協議または遺産分割調停・審判(遺産分割手続) をすることとなります。
そのため相続財産によっては、遺産分割協議により紛糾するおそれがあります。
これを避けるには、出来るだけ誰に何を承継させるのかといった、相続財産を特定して遺言することです。

遺言書による相続分の指定を第三者へ委託する書式

〇条 遺言者は、友人である次の者に対し、相続分の指定を委託する。
  住所 相続分の指定の委託者の住所
  職業 相続分の指定の委託者の職業
  氏名 相続分の指定の委託者の氏名
  生年月日 相続分の指定の委託者の生年月日

ただし委託された第三者は委託を拒否することができます。
ここで第三者が委託を拒否した場合や委託を承諾したにもかかわらず指定をしない場合、民法第114条を類推適用し、相続人などの利害関係人から相続分の指定を催告することができます。
この催告をしたにもかかわらず、相当の期間の中で第三者が相続分の指定をしない場合は、遺言による指定の委託は効力を失い、遺産分割協議または遺産分割調停・審判(遺産分割手続)をすることとなり、紛争の原因となります。

そしてこの第三者のなかに共同相続人や包括受遺者などのも含まれるかどうかについては争いがあり、裁判例のなかにも「第三者は、信義則上相続に関係しない者である必要があるから、相続人や包括受遺者は含まれない」と解したものがあります。(大阪高決昭和49年6月6日)。

従って遺言によって第三者に相続分の指定を委託する場合、委託者に事前に相談し、委託を拒否されることがないことを確認する必要があります。

遺産の分割方法の指定、または指定の委託、若しくは遺産分割の禁止

遺産の分割の方法を定めるとは、他の共同相続人と遺産分割の協議をしないで、その指定された相続財産が、遺言者の死亡と同時に、その指定された相続人のものになるという規定です。
また遺産分割方法の指定の委託とは、遺言者が相続する遺産の内容を決めるのではなく、第三者に決めることを委ねる遺言事項です。
そして、相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることを遺言で定めることが出来ます。
まずは、関連する条文を見てみます。

遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止(民法908条)

  • 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

遺言書による遺産の分割の方法の指定する書式

〇条 遺言者は、〇〇に長男甲に〇〇の不動産を相続させる。
〇条 遺言者は、妻に〇〇銀行にある預金のすべてを相続させる。

遺産の分割の方法の指定の効果

  • 不動産の場合
    →登記なくして第三者に対抗できる。
    特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は,特段の事情のない限り,何らの行為を要せずに,被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される(最高裁平成3.4.19判決)
    登記なくしてその権利を第三者に対抗することができる(最高裁昭和38.2.2判決、最高裁平成5.7.19判決)

遺言書による遺産の分割方法の指定を第三者へ委託する書式

〇条 遺言者は、遺産相続財産の分割方法を次の者に委託する。
  住所 遺産分割方法を指定する委託者の住所
  職業 遺産分割方法を指定する委託者の職業
  氏名 遺産分割方法を指定する委託者の氏名
  生年月日 遺産分割方法を指定する委託者の生年月日

遺言書による遺産の分割方法の指定に関しても、委託された第三者は委託を拒否することができます。
そしてこの第三者のなかに共同相続人や包括受遺者などのも含まれるかどうかについても、裁判例で「被相続人が遺言で遺産分割の方法の指定を委託しうるのは共同相続人以外の第三者であることを要し(民法908条参照)、共同相続人中の一人に遺産分割の方法の指定を委託する遺言は指定の公正が期待できないから無効であると解するのを相当とする。」(東京高裁昭和57.3.23判決)とあり、第三者として相続人を指定することはできません。

遺言書による遺産分割の禁止する書式

〇条 相続人〇〇が20歳になるまで全相続財産の遺産分割を禁止する。
〇条 相続人〇〇が高校を卒業するまで、不動産〇〇に関して遺産分割を禁止する。

全相続財産を遺産分割の禁止の対象にすることも、特定の相続財産についてのみ遺産分割を禁止するのも可能です。
相続人の1人が遺言者の不動産の土地建物に住んでいた場合、一定期間住めるようにしたいと思えば、遺言でその特定不動産のみを遺産分割を禁止する遺言をすることができます。
ただし遺産分割の禁止期間は5年を超えることはできず、5年を経過すると相続人は誰でも遺産分割の請求することができます。